8年前の今日、KING OF POPと称えられたスーパースター、マイケル・ジャクソンは50歳という若さでこの世を去りました。今回はマイケルが平和への思いを託した名曲を振り返り、仏教徒として平和について考えてみました。最終回である本稿では「We are the world」を取り上げます。

引用元:www.youtube.com/watch?v=9AjkUyX0rVw
音楽と社会
人類の歴史の中で生まれた様々な社会で、音楽は人々の感情を伝え続けています。それは言葉を超え、世界を巻き込む力となり、多くのメッセージを投げかけてきました。ジョン・レノンやボブ・マーリーをはじめ、数多のアーティストが喉を枯らして叫んだその声は、確実に今も社会に影響を与えています。そしてマイケル・ジャクソンもまたその偉大なアーティストの一人といえるでしょう。
We are the worldについて
「We are the world」は1985年、アフリカの貧困と飢餓の解消を目指して作られたたものですが、正確にはマイケルの曲ではありません。USA for Africaという全米の有名アーティストが集結したスペシャルユニットによるチャリティーソングです。もともとはイギリスで始められたバンド・エイドというチャリティープロジェクトの影響を受け、アメリカでも行動を起こそう、として始動しました。その中心となったのがライオネル・リッチー、そしてマイケルだったのです。
この曲のCDとビデオの売り上げの合計は6300万ドル(現在の約70億円)になり、その印税は全て寄付されました。そして、過密なスケジュールの合間を縫ってレコーディングに参加した45人の有名アーティスト達は報酬無しの完全なチャリティープロジェクトとなりました。
世界と一つ
We are the world, we are the children
(私達は世界と一つ、私達は子ども)We are the ones who make a brighter day
(私達がより輝ける一日を作り上げるんだ)So lets start giving
(だから与えることからはじめよう)There’s a choice we’re making
(作り上げていく選択肢がある)We’re saving our own lives
(私達の命を救うんだ)Its true we’ll make a better day
(それこそが本当により良い一日を築くということだ)Just you and me
(私とあなたで)(We are the world/USA for Africaより)
筆者訳
この曲の歌詞は説明するまでもないかもしれません。この曲を象徴するコーラス部分は、1991年生まれの筆者でも物心がついた頃には耳にしていた記憶があります。
私達は世界。キリスト教の世界観でいえば、誰しも神の子として等しく存在しています。仏教でいえば、私たちは変化し続ける世界の中で、等しく仏となれる存在です。その中で争ったり、差別をしたり、傷つけ合うのではなく、お互いの世界を尊重し合える社会を築いていきたい。この曲を歌ったアーティスト達の声がそう聞こえました。こうしてWe are the Worldはアメリカンポップス界に金字塔を打ち立てたのです。
しかし、この奇跡はこれで終わりではありませんでした。
We are the world:25 for Haiti
2009年6月25日、マイケルは突然この世を去ります。世界中を駆け巡ったこのニュースに、世界の至るところで悲しみの声があがりました。
その突然の死から半年後、2010年1月12日、ハイチ地震が発生します。そして同時にこの年はWe are the worldの発表から25周年の節目でした。そこでマイケルとともにUSA for Africaの中心人物であったライオネル・リッチーらは、「もしマイケルが生きていたならば、四半世紀前と同じような行動を起こしたかっただろう」と再び全米のアーティストに呼びかけたのです。そうして制作された被災地支援のチャリティーソングが「We are the world:25 for Haiti」でした。25年前はポップスシンガーが中心だったのに対して、この曲にはR&Bシンガーやラッパーも数多く参加しています。世界にまた、We are the worldが響き渡りました。
特に5:50からのラップパートは圧巻なので是非ご覧ください!
マイケルの灯火
筆者自身、正直に言えばマイケルの死は早すぎたと感じます。しかし、平和を愛し、人を愛した彼の想いは人々の心に受け継がれました。We are the worldは多くのアーティストに影響を与え、日本でも様々なチャリティーソングを生むきっかけとなりました。しかし、それはほんの一例に過ぎないほどに、彼の意志は今も世界中の人々の心を動かし続けているのです。
マイケルは自分一人で世界を変えようとしたのではなく、人々の心に火を灯そうとしたのではないでしょうか。人の命はいつか終わりを迎えますが、その意志は受け継ぐ人がいる限り広がり、伝わり続けます。むしろ、人は意志という火を灯すロウソクであり、その火を絶やさないために限りある命を精一杯燃やしながらいきているのです。。
マイケル・ジャクソンというロウソクはあまりにも早く燃え尽きてしまいました。しかし、彼が灯した火は私達という次の世代のロウソクに受け継がれているのです。
引用元:www.youtube.com/watch?v=9AjkUyX0rVw
これからの時代に
KING OF POPと謳われたマイケル・ジャクソン。彼の生涯は私達の測り知れない苦悩や葛藤の連続でした。しかし、それでも世のため人のために生きた彼の生き様は、僧侶として、もっと言えば人として深い学びがあります。
偉大な先人達に対して今を生きる人間ができることは、火を絶やさないようにすることです。お釈迦様が亡くなる際に「私の身体ではなく、教えを拠り所にしなさい」と言い残されたように、私達は先人が灯した火を頼りに、歩みを進めていくことが大切なのです。
マイケル・ジャクソンの命日にちなんで、全3回の記事を執筆させていただきました。筆者が彼の曲を聴くようになったのはその死後であり、往年のファンの方々の足元にも及ばないほどの乏しい知識しかありません。しかしそれでも筆者なりのマイケルに対する思いを言葉にしてく中で、マイケルは人生を導いてくれる一つの光であったことに気付かされました。読者の皆様にとってもマイケルがそのような存在であったならこれほど嬉しいことはありません。
2009年6月25日は、マイケル・ジャクソンの命日。しかしそれは、一つの物語が終わった日ではなく、今を生きる私達がその続編を託された日なのではないでしょうか。
2017年6月25日 西田稔光
引用元:www.youtube.com/watch?v=9AjkUyX0rVw