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日本人はThis is Japanが言えるのか|S-Labo

日本人はThis is Japanが言えるのか

西田 稔光
This is America徹底仏教This is JapanChildish GambinoHIP HOPThis Is Nigeria仏の耳で聴く音楽

今年5月5日に公開されたとあるミュージックビデオは公開から3日で3000万再生、一ヶ月で2億4千万再生を記録した。ビデオの名前は「This is America」。明るさとバイレンスとダンスでアメリカという国を表現したこのミュージックビデオに、日本人は何を思うのだろうか。

 

引用元https://youtu.be/VYOjWnS4cMY

出典https://youtu.be/VYOjWnS4cMY

ガンビーノが描く光と影

「This is America」は俳優でもありラッパーとしても活躍するChildish Gambino(チェルディッシュ・ガンビーノ)の作品である。このミュージックビデオ(MV)はすでに世界中で話題になり様々な解説や分析を行ったコラムが書かれている。

 

衝撃の映像で全米を揺るがす『This Is America』は、現代の新しいプロテストソングだ(動画あり)[外部リンク]

みんなの洋楽ランキング[外部リンク]

 

 

このMVは、アコースティックギターの軽快でポップなメロディに、パーティーを楽しもうという、いわゆる「万人ウケする曲」で始まる。と思った次の瞬間、ガンビーノは踊りながら銃を手にし、袋を被せられた男性の頭を撃ち抜くのだ。そこからは”This is America”と繰り返しながらアメリカの社会で、特に黒人が抱える様々な生き難さを皮肉をとともに言葉を吐いていく。

そこには、アメリカの華やかさに紛れて表沙汰にはならない闇が、視覚的にも聴覚的にも描かれているのではないだろうか。

 

金を稼ぎな、坊や

そしてこの曲のHook(サビの部分)はこう続く。

 

Ooh-ooh-ooh-ooh-ooh, tell somebody[ウーウー、誰かに教えてやれ]

You go tell somebody[教えてやれよ、お前]

Grandma told me[ばあちゃんが言ってた]※5

Get your money, black man (get your money)[金を稼ぎな、坊や(金を掴め)]

Get your money, black man (get your money)[金を稼ぎな、坊や(金を掴め)]

Get your money, black man (get your, black man)[金を稼ぎな、坊や(金を掴め、ブラックマン)]

Get your money, black man (get your, black man)[金を稼ぎな、坊や(金を掴め、ブラックマン)]

Black man[ブラックマン]

 

この歌詞の和訳は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカルであり、Gotchという別名義でも活動する後藤正文氏が知人とともに作成したものがわかりやすかったので注釈とともに参考にした。後藤氏はヒップホップカルチャーやラップにも精通しており、この曲で使われるスラングなどもしっかりと背景を踏まえて考察されている。

 

 

※5.この訳は難しかったです。原文では”Black man”なので、直訳では「黒人」なのですが、文脈において「ばあちゃんが言ってた」と続きます。The New Yorkerの記事でDoreen St. Félixはこれは「黒人の努力を啓発する古き教義」と書いています。

なので、黒人のおばあちゃんが孫に啓発するように「坊や」と訳しました。ですが、コーラスのリフレインで”Get your money—Black Man”が次第に”Get your—Black Man”と変化して行きます。

解釈をすると、今でもアメリカそして世界で多大なる影響を及ぼした大西洋奴隷制度の中で、黒人を生け捕って労働者として売ると大金を儲けられる経済システムも同時に批評しているものと思われます。訳を2分割し、原文では同じ言葉である”Black Man”を「坊や」と「ブラックマン」と訳しました。”

これがアメリカ油断すんじゃねえ俺の生き様を見ろよ(外部リンク)より

ここに見えるのは、今なお「黒人はこうなんだよ」という一種の諦めとも取れる。幼い頃から祖母にこう言い聞かせられて育つ黒人を取り巻く理不尽な社会環境を表現しているのだと、筆者は受け止めている。

世界の反応

 この曲の発表を受けて、世界中でそのダンスやビデオ等のオマージュが量産された。しかしその中でもメッセージ性やビデオのインパクトなどで本家に次ぐ完成度をみせているのがナイジェリアのFalzというヒップホップアーティストによる「This Is Nigeria」である。

 

 

このMVでは、ナイジェリア国内で起きたイスラム過激派による女学生拉致事件や、本来治安を守るべき警察の汚職、民族間の紛争など、国民が犯罪に手を染めざるを得ない社会情勢を表現している。「This is America」がアメリカ社会の光と影だとするならば、「This Is Nigeria」はひたすら影である。光がないのだ。考察の中には、「This is America」の最後にはガンビーノが何かから逃げようとする描写があるのに対し、Falzにはそれが一切ないという指摘があった。

インパクトは「This is America」以上?「This is Nigeria」MVが訴える”みんなが犯罪者”的ゲトーでリアルなナイジェリア[外部リンク]

 

逃げ先となる光すら見出せず、そこを抜け出そうとする発想すら生まれないのかもしれない。

 これは、己の生まれを呪い、救いも見出せない社会で生きているナイジェリア国民の痛切な魂の叫びではないだろうか。

What is Japan?

それでは、日本ではどうだろうか。すでに削除されているため、詳しくは触れられないが、同じくこのビデオを世界で活躍する若手ダンスチームが「This is Japan」としてオマージュした。ダンスのみを取り上げたダンス動画ならともかく、リリックを「おもてなし」「マジ卍」「スタバでストーリー」といった日本での流行り言葉と若者の楽しい日常生活を切り取って「はい、チーズ!」と写真を撮って終わるというものだった。

 これがガンビーノの意図を汲んでいない、ということで批判を受け、炎上、動画を削除という運びとなった。付け加えるならば彼らはダンスを通じて海外を周り、同世代と比べればずっと世界を知っている人間である。

この件から一体何がみえてくるだろうか。

底を汲み取る力

 筆者は、先述のダンスチームが悪いとは思わない。ストリートダンスをかじった筆者にとっては彼らのダンスの実力には脱帽である。

 しかし、このビデオとそれを批判する人々すべて込みで、この一件は今の日本人の姿を如実に表しているのではないかと思う。

 動画にしても音楽にしても、とにかく情報が手に入りやすい時代になった。誰でも簡単に専門的な情報を知り、評論家になれてしまうこの時代には、音楽も刹那的に通り過ぎる情報の一つになってしまうのかもしれない。筆者もまた、ビデオテープが擦り切れるほど一つの映像に見入ったり、一枚のCDをひたすら聴くこともなくなってきている。手に入る情報の多いがゆえに、自然と一つ一つに対する探求心が薄くなってしまっているのかもしれない。だからその作品の背景やメッセージ性(特に外国語の場合)よりも、目につくおもしろさや、耳に入る新鮮さに反応しやすく、発信されやすくなっているなっているのだろう。

実際にダンスのニュースを扱うメディアではこのような記事が書かれていた。

米話題の「This Is America」のパロディ「This Is Japan」が物議を醸し炎上する事態に[外部リンク]

兎か馬か象か

 「徹底」という言葉がある。

これはもともと仏教から生まれた言葉で、由来となる物語はこうだ。

 

ある川を渡ろうとする兎と馬と象がいた。

はじめに兎は水面をスイスイ泳いで対岸へ渡った。

次に馬は水を蹴りながら水中を進んで渡る。

最後の象はドシンドシンと川底を踏みしめながら渡っていった。

 

「徹底」という言葉の意味は、この象のように底の底まで達することだ。

私たちはどうだろうか。人にはそれぞれに興味関心の分野があって、それぞれに徹底しているものとそうでないものがある。いわば状況によって兎にも馬にも象にもなり得るのだ。ダンスに徹底している人にとってはその作品をダンスとして切り取ってしまう気持ちはわかるし、社会問題に徹底している人がガンビーノの表現したメッセージを重く受け止める気持ちもわかる。

大事なことは、あらゆる物事には自分には見えていない底があることを知っておくということなのではないだろうか。

 

筆者が曹洞宗の一僧侶として言うならば、過去にあった様々な人権問題や宗門の歴史を、ただの情報にしてしまってはいないか。底の底には自分が学ぶべきことがまだまだあるのではないか。坐禅や食事に関して自分が思いもよらない角度で捉える人に出会ったこともある。

一社会人としていうならば、今日本が抱えている様々な問題が、どこか他人事の様になって、直接自分に関係ないと思ったりしてはいないだろうか。

 

わかったと思っていても実は底が見えていないことはいくらでもあるのだ。

 

 

This is Japanを表現したダンサーの彼らには世界を回ったからこそ見えた日本の良さがあったのかもしれない。それではこの「私」には何が見えているだろうか。良い悪い、正解不正解ではなく、今自分が置かれているこの国、この環境で、私たちはそれぞれに、そして人の数だけ頭の中に描かれるものは異なることを、これからの社会では知っておく必要があるがあるのだろう。

 

 

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