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「手軽さ」と「軽率さ」 ~昨今の悪ふざけ動画問題に関する考察~|S-Labo

「手軽さ」と「軽率さ」 ~昨今の悪ふざけ動画問題に関する考察~

中野 孝海
考察日常

  SNSが爆発的に普及した昨今。便利であるという反面、様々な問題が生み出されてきました。

  特に最近注目されているのが、従業員による店内での迷惑行為を撮影した動画の投稿問題。

  個人だけでなく企業全体に悪影響を及ぼすこれらの問題が何故多発しているのでしょうか。

  古人の言葉から考察していきます。

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 今や老若男女を問わず生活の必需品となったスマートフォン。でも利用方法を少し誤ると……

SNSの光と影

 SNSが爆発的に普及し、生活の一部となった現代社会。その中で私たちは様々な意見を交換し、主張し、共有することができるようになりました。人によっては生活に欠かすことのできない必須ツールとなっている方もいることでしょう。

 しかし、社会的な広がりを見せる一方で、多くの問題を孕んでいることも否定できません。過激な写真や動画の投稿、ヘイトスピーチなどがその代表的な例です。その内容も仲間内での悪ふざけ的なものから、明確な悪意を感じさせるもの、時には犯行の一部始終を捉えたものまで様々あります。

迷惑動画の投稿から処罰まで

 特によく報道されているのが、バイト先での悪ふざけ動画に関する報道です。「バカッター」や「バイトテロ」とも称される一連の迷惑行為。動画を撮影する当人たちにとっては、楽しい時間なのかもしれません。

 しかし、それが一度SNS上に投稿され、世間に目に晒される状態になると、瞬く間に世界中に拡散し、その内容によっては所属する企業に対してクレームが多数寄せられ、企業側は公の場での謝罪を求められる事態となる。当然企業に対するイメージの低下など悪影響を避けることはできないでしょう。

 当然迷惑行為などを行った実行者や、動画の撮影者らに対しても何かしらの処罰が求められます。解雇処分など職場内だけで処理されることもあれば、損害賠償の請求など法的な場で処罰が求められるケースもあります。

 何故迷惑動画の投稿が、ここまで大きな社会問題へと変化したのでしょうか。それは、動画の撮影から投稿までの道筋を考えると、自ずと見えきます。

撮影から投稿までの効率化

 少し前までは、動画を撮影するにしてもカメラなどの撮影器具や記憶媒体を複数用意し、その動画データをパソコンに移して編集を行っていました。動画の編集には専門の知識が必要であり、更にはどんなに手間暇かけて動画を編集したとしてもネット上に回線が繋がっていなければ、世間の目に触れる機会すらありませんでした。

 何よりも必要だったのは〝時間〟です。撮影するための時間、編集するための時間、移動するための時間。一つの動画を作成し投稿するためには、実に多くの時間が求められました。

 それらの問題を一気に解決へと導いたのが、多くの技術革新と共に誕生したスマートフォンでした。動画の撮影から投稿まで、その一連の動作を1台あれば全て賄うことが可能になり、電波の届く環境下であれば何時如何なる場所でも世界中に発信することができるようになってのです。

 難しいことなど何も考えずに、指先を少し動かすだけで全ての操作が完了。更に投稿した動画が注目され、大きな反響を生めば一躍有名人にもなることもできます。現にSNSや動画の投稿サイトから生まれた有名人や著名人も数多く誕生し、SNSやネットの世界は、現代におけるアメリカンドリームを掴む場所といっても過言ではありません。そういった意味では、注目を浴びたいと云う意図で、過激な行動に走ってしまうことも今回の問題の一つの原因といえるでしょう。

古人云く

 無論原因は他にもあります。中国は宋の時代の思想家である荘子は、自ら記した書物である『荘子』の中に、次のような一文を記しました。

「機械を有する者は必ず機事有り。機事を有する者は必ず機心有り。」

 日本女子大学の林久史教授は、この言葉について同大学が発行する紀要の中で次のように説明しています。

「機械を使うことで, 人間は自分のエネルギーと時間を節約できる。しかし, そうして確保されたエネルギーや時間は, 人間を必ずしも幸せにしない。加えて, 機械を使ううちに, 人間は機械に依存し, 機械が好む考え方をするようになる。このことは, 人間固有の能力や感性を衰弱させるだけでなく, いつか必ずおこる機械の劣化や故障に対応できなくさせる。」(日本女子大学紀要理学部第二十三号より引用

 この言葉の通り、機械を使うことによって私たちの生活は多きく変わり、効率的になりました。その一方で、判断に必要な時間が効率化の中で失われ、正常な判断能力が欠如してしまったことが、今回の一連の問題の根底にあるように感じます。

 操作が手軽になり、簡単になったということは、操作にかける時間が減ったということであり、操作にかける時間が減ったということは、投稿内容について考える時間が減ったということです。投稿内容について考える時間が減少すれば、当然その内容に秘められた危険性に気が付く機会も減少します。

 物事を「手軽にする」という行為は、手軽にするために余計な何かを削り落とすことと同じです。ちょっと時間をおき、冷静になって考えれば、誰もがそれが不適切な内容であるということに気付く問題も、気が付くことができない。そう考えると、林教授の云う通り、私たちの感性は知らぬ間に衰弱しているのかもしれません。

僧侶が起こした動画騒動

 以前、多数の僧侶によるSNSへの動画投稿騒動に関する考察記事を掲載しました。「#僧衣でできるもん」というハッシュタグが付けられた一連の動画は大きな注目を浴び、ネットニュースや報道番組などで取り上げられる事態にまで発展しました。

 これらの騒動の発端は、とある僧侶が僧衣を着た状態での自動車運転を摘発されたことに始まり、一連の動画の投稿も、運転に何ら支障がないということを世間に知ってもらうために、一部の僧侶が僧衣を身に纏った状態で行ったパフォーマンスを動画に納め、SNS上に投稿したのです。

 この呼びかけに呼応するかのように、たくさん僧侶達の手によって、様々な動画が投稿されました。しかし、それと共に動画の内容も多様化してしまい、本来の目的や意図が曖昧になり、年末年始という時期も相まって、僧侶のかくし芸大会と揶揄される結果をも生み出してしまいました。

 今回は自然消滅する形となりましたが、一歩間違えれば更なる火種を自ら生み出していた恐れさえあります。軽率な投稿は、本来の目的から逸脱するだけでなく、見方や見る人によっては、個人だけでなく組織全体のイメージをも悪化させるということにもなってしまうのです。

埋没していく「地雷」

 仲間内で楽しむための動画も、ふとした弾みでSNSという世界に開かれた場所に投稿されれば、見方によって犯罪映像へと変化してしまいます。一度拡散されてしまえば最後、今度は絶対に消すことはできない「デジタルタトゥー」として、投稿者自身を半永久的に苦しめ続ける疵にも成りかねないのです。

 筆者個人の考えを述べれば、一連の迷惑行為の多くは、その場での悪ノリや悪ふざけなど一時的な興奮状態の中で撮影から投稿までが行われたものであると予想しています。しかしその中には、会社や職場に対する不平や不満を募らせ、それが爆発した結果が含まれている可能性も完全には否定できません。彼らの言葉にならない悲痛な叫びや憤りが、一連の迷惑行為の中に埋没させられてしまうことは、人命を左右する地雷を地面に埋めるのと同じことなのではないでしょうか。

最後に

 道元禅師は弟子たちに対して次のような言葉を残しました。

「学道の人、言葉を出ださんとせん時は、三度顧みて、自利、利他のために利あるべければ是を言うべし、利なからん時は止まるべし」(『正法眼蔵随聞記』「学道の人、衣食を貪ることなかれ」より引用)

 ここでいう「三度」とは厳密に3回という訳ではありません。何度も何度も繰り返し顧みて、確実に人の為になるのであれば発言し、ならないのであれば発言を控えなさいというこの教え。これは今回の動画問題だけでなく日常のありとあらゆる場面に当てはまる教えかと思います。

 気が付き踏み止まるためには、〝考える〟という行為が何よりも必要不可欠です。ありとあらゆる行為の結果へと繋がり結びつく〝考える〟という行い。効率化が進むこれから先の未来でも決して等閑にしてはならないのです。

参考資料・リンク

・水野弥穂子 訳『正法眼蔵随聞記』(ちくま学芸文庫、1992年)

・林 久史「機械を有する者は, 必ず機事有り。機事有る者は, 必ず機心有り。」(『日本女子大学紀要』理学部第二十三号、2015年)

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