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避難から生じる苦しみ ~台風19号からみた避難の難しさ~|S-Labo

避難から生じる苦しみ ~台風19号からみた避難の難しさ~

中野 孝海

 全国各地に甚大な被害をもたらした台風19号。その発生から3か月が経過しました。災害からの復興作業が進む一方で今もなお手つかずの状態が続いている地域も少なくありません。筆者が普段の生活を送っている福島県も河川中心に大きな被害を被りました。

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 濁流に飲み込まれ、折れ曲がった樹木。川岸の木々には3か月たった今もなお、当時の漂流物が付着している。

阿武隈川という河川

 福島を象徴する河川である阿武隈川は、全長239キロメートルにも及びます。県内を南北に渡る形で横断し、市内を穏やかに流れる一級河川でもあります。夏になれば市内の仏教会が関わる灯篭流しや花火の打ち上げなどが行われるなど、市民にとっても大変馴染みの深い河川の1つといえるでしょう。その一方で大雨や長雨などが降れば一気に水かさが増し、全てを飲み込む濁流へと変化する非常に危険な川としても知られてきました。

 筆者が普段過ごしているお寺は、この阿武隈川に隣接する形で建っており、窓の外からもその様子を眺めることができ、外に出ればものの1分足らずで川辺に辿り着くことができます。それほどの近距離だからこそ、今回の台風で一番に危険視したのが、大風でも大雨でもなく、河川の増水による水害でした。

避難するべきか否か

 昨年の10月12日。台風19号が福島県に上陸した際も、筆者はその様子をテレビの中継などを通して見守っていました。実際に河川に様子を見に行くことは大変危険であり、画面上に現れる情報が全てでした。早期の段階での避難も検討しましたが、

①寺院近くの堤防が高く、越水する可能性が低い。

②寺院そのものが周辺よりも高い位置にあり、越水しても流される心配が少ない。

③寺院という性格上、檀信徒や近隣の住民が避難に訪れる可能性がある。

以上の理由から、早期の段階での避難は見送り、緊急時には別棟でより河川から離れたところにある坐禅堂の2階に避難することを決め、様子をうかがうことにしました。

 時間が経過するにつれて雨風は勢力を増し、市内に流れる河川流域にはその規模に関わらず次々と警戒情報が発令されていきました。

 福島市内全域に大雨特別警報が発表されたのが午後10時のことでした。その1時間後の午後11時には阿武隈川流域全ての世帯を対象に避難指示が発令されました。この情報を耳にした私たちは、当初予定していた坐禅堂の2階へと避難をはじめ、雨風の音が強まる中、そこで先の見えぬ不安な夜を明かしたのです。

進まぬ災害復興

 夜が明けて河川の方に足を運んで撮影したのが、この記事の最初に掲載した写真であり、次の動画です。限界まで水量を増した濁流が、物凄い速さで、今まで聞いたこともないような轟音を轟かせながら、目の前を流れていました。

 お寺の周辺ではかろうじて大規模な越水や堤防の決壊などの被害は免れました。しかし、阿武隈川や市内を流れる中小河川を中心に、各地で越水や堤防の決壊による浸水被害が発生し、その後の報道で多くの方々が傷つき、亡くなられたことも判明しました。

 あの災害から3か月が経過した今でも、河川敷には大量の漂流物や放置され、抉られた堤防なども手つかずのままです。家屋の復旧作業も人手不足の影響から難航しているというお話も耳にしました。

 元通りの姿を取り戻すためには、多くの時間が必要となることは火を見るより明らかです。

 

避難から生じる苦しみ

 今回改めて避難について思いを巡らせてみると、〝避難〟というものは身を守るための行為であると同時に、非常に苦しみや悲しみを伴う行為であるという事でした。その原因は命の危険にさらされる身体的な恐怖だけでなく、様々な心理的な苦しみや悲しみがあることが今回の体験でわかりました。その苦しみとは「失う苦しみ」「選ぶ苦しみ」「手放す苦しみ」です。

 「失う苦しみ」は、文字通り「大切なものを失うかもしれない」という苦しみです。自身の暮らす家や、財産、日々の生活。避難するという事はそれらを一時的でも失うという事です。 一度河川が氾濫すれば、住み慣れた我が家や思い出の品々は水に沈み、濁流となれば一瞬で流されてしまいます。復元することは難しく、最悪二度と自分の手元に戻らないかもしれません。大切なものを失うことによる心の喪失感は計り知れず、一度失うことを考えてしまうと、どうしても逃げることに躊躇してしまいます。

  「手放す苦しみ」は、自分のものを「自らの意思で手放す」苦しみことです。突発的な自然災害では、自らの意思とは関係なしに様々なものを失います。そこに自分の意志反映されません。しかし、避難となると自らの意思で手放すという選択肢を選ばなければなりません。しかし、一度手放したらもう2度と手元には帰ってこないかもしれません。急な避難を迫られたとき、手放すという行いはそう簡単にできるものではありません。

 「選ぶ苦しみ」は、どれを避難先に持っていき、どれを残すかを「自らの意思で選ばなければならない」という苦しみです。他の人から見たら些細なもの、代えが効くものだとしても、自分自身にとっては大切な思い出が詰まった、この世に2つとない一品です。家の中には同じようなものが沢山あります。可能であるならば一つ残らずかき集めて、両手一杯に抱えて避難したい。しかし、自らの天秤にかけて選ばなければなりません。そして時に「自分自身の命」でさえもその秤の上にが乗せられることさえあるのです。

最後に

 仏教の教えには、愛別離苦というものがあります。自分自身が愛するもの、愛着を抱くものを手放すことによって生じる苦しみを表す言葉ですが、避難とはまさに愛別離苦の連続といえるでしょう。しかし、何よりも大切なものは自分自身の命であることを忘れてはいけません。

 今回テレビやラジオを通じて「命を守る行動」という言葉が何度も呼びかけられました。恐らく今後も同じような呼びかけが災害のたびに行われることでしょう。自分自身の命を守ることも大切ですが、自分の身の回りの命を守ることもとても大切です。その為には早い段階からの準備や行動、呼びかけが重要となります。より多くの命を守るためにはどのように行動したらよいのか。常日頃から考え、準備を行う必要性があるのです。

 最後に、今回の台風19号を始めとする一連の台風被害で被災された方々に対し、1日も早い復興を願うとともに、犠牲となった方々に対して、御悼みを申し上げます。

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